日本学術振興会 産学協力研究委員会
次世代の太陽光発電システム第175委員会

第3期

設置継続の主旨

太陽電池をエネルギー変換素子に用いた太陽光発電は、地球温暖化ガスを排出しないクリーンなエネルギーとして期待されております。また、2011年3月11日に発生した東日本大震災と、それに伴う福島第一原子力発電所の事故以来、クリーンで安全な再生可能エネルギー源として、太陽光発電に寄せる期待が非常に高まっています。本委員会は、2020~2030 年の大規模導入を目指した次世代太陽光発電システムについて、従来の組織の壁を越えて、太陽電池材料、太陽電池技術、システム技術分野を含めた学界、産業界の研究者、技術者が組織横断的に情報交換や、協同で研究を行うことを目的に平成16年4月に設立されました。
平成16年度に第175委員会が設置されて以来、太陽光発電システムに関する研究開発、産業応用は大きく進展いたしました。まず、世界の年間の太陽電池生産量は、平成15年には、740MW のレベルでしたが、平成24年には37GW と50倍に増加いたしました。現在、世界の太陽光発電総設置量は100GW に上ります。また、国内においても太陽光発電システムの積算導入量は、10GWまで増加いたしました。平成 16年、NEDO において太陽光発電システムの導入、研究開発の将来のあり方などを示すロードマップPV2030(その後PV2030+)が設定され、明確な目標設定のもとで活発な研究開発が展開されました。その結果、本委員会メンバーを中心とした産学連携の研究成果などにより、各種太陽電池変換効率が大幅に向上したほか、シリコン薄膜太陽電池、Cu(InGa)Se2 薄膜太陽電池などの新型太陽電池の生産が開始されるに至っております。また、将来、超低コスト太陽電池として期待されている有機系太陽電池の研究開発も大きく進展し、一部、民生用途から応用が始まりつつあります。
太陽光発電の技術開発に関するロードマップでは、2050 年までに、太陽電池のエネルギー変換効率を40%まで向上させ、発電コストを7円/kWh 以下にまで下げることを目指しています。この目標が達成されれば、2050年に世界で10TW(100 億kW)の太陽光発電システムを導入することも可能であります。この太陽光発電システム導入量は、今後、人類が必要とするエネルギー需要の増分に対応するものであります。
太陽光発電に関する2030 年さらには2050 年までの導入・開発目標を達成していくには、これまでとは異なった視点での研究開発も必要となります。例えば、
・エネルギー変換効率を従来とは異なった発想で向上させるための量子ドットを用いた中間バンドやマルチエキシトンの新原理の探索など
・シリコン結晶の品質を極限まで高めるための欠陥構造の解明・欠陥制御技術、ナノシリコンの構造解明・物性制御
・100 万トンレベル(100GW 以上の生産量に対応)の高品質シリコン原料・インゴット・ウェハの製造技術
・極薄型(50μm 以下)のSi 太陽電池で超高効率を得るための表面、界面制御など
・Ag あるいはAl系カルコパイライト、ペロブスカイトなどの新光吸収層開発
などがあげられます。
また、製造面で眺めてみても、すでに1社あたり年間太陽電池生産量が1-3GW を越す勢いにあります。今後は、10GW さらには100GW の年間生産量に見合った製造プロセス開発も必要であります。最近では、中国によるターンキー製造装置を用いた安価なシリコン太陽電池の製造が目立ってきており、わが国が将来ともに太陽光発電分野で優位性を保つには、超高効率・高信頼型のシリコン太陽電池や、これまでの太陽電池構造にとらわれない革新的な技術開発が必要不可欠な状況となっております。また太陽電池産業の裾野の広さという観点で眺めてみると、従来のシリコン原料・ウェハやセルメーカ主体の活動から、電極材料、封止材料、原料ガス材料、透明導電膜材料などの周辺材料に係わる産業が加わり、応用分野では、電気機器・電力以外にも、自動車などの運輸産業、石油、ガスなどのエネルギー部門の産業からの参入も多く見られ、太陽光発電が従来の枠組みを超えた一大産業分野を築きつつあります。さらに、今後、TW レベルのエネルギー源として大規模に実用化していくには、エネルギーマネージメント・スマートグリッドなどに関する研究開発が必要不可欠となってきております。
これまで、第 175 委員会では、国際ワークショップや、2 カ国(あるいは3 カ国)間のジョイントワークショップなどの活動により、欧米はじめ、中国、韓国、タイ国、台湾、マレーシアとの交流を深めてまいりましたが、太陽光発電システムの普及は世界共通の課題であり、今後は、シンガポール、インドネシアなどのアジア諸国や、中東のアラブ諸国との国際協力体制を築いていく必要があります。
以上のように次世代太陽光発電システムを取り巻く環境は、大きく変化しており、わが国がこの分野で技術開発の優位性を保ちつつ、世界におけるTW レベルの大規模な普及に大きく貢献していくには、新原理・新材料の探索から、デバイス物理、デバイス構成、セル・モジュール製造のための周辺技術、システム応用技術、エネルギーマネージメント・スマートグリッド技術等の開発を急がねばなりません。また、今後の研究開発には、極めて挑戦的な課題が多く、これには、物理学、無機・有機材料工学、化学工学、機械工学、電気・電子工学、エネルギー科学、情報工学等の学際的でかつ広範囲の学術研究が必要であります。さらに、産学間の連携研究、国際化に対応した迅速な調査研究と情報交換、国際的に著名な研究者や国の施策作成に関わる者等を加えての国際的討論会などによる情報の共有化が必要であります。このような観点から、本委員会をさらに継続することが不可欠であるとの結論に達し、本委員会の継続を申請いたしました。

今後の活動方針及び期待される成果

 第3期は、本委員会にて太陽光発電に関する総論的な課題を議論するとともに、国際ワークショップ、国内シンポジウム、アジア諸国とのジョイントシンポジウムを企画、実施する。一方、専門的なところは、分科会において深く掘り下げた議論を行う。本委員会の委員は、本委員会主催、分科会主催に係らず、いずれの会合にも出席可能とする。それぞれの企画においては、単なる研究発表による情報交換にとどまらず、2020 年以降を狙った大学のシーズの提供、太陽光発電産業界からのニーズの提供の場とする。また次世代太陽光発電を実現するための具体的な課題の抽出、方向性の議論を行う。さらに研究会と合わせて、年1 回程度、太陽光発電システム見学会を企画する。第 3 期では、産業界の新しいニーズに応えるべく若手を中心に分科会活動のいっそうの活性化を図るとともに、2020 年以降の大規模な導入を目指した次世代の太陽光発電システム研究に関する下記の課題と取り組む。 

次世代の太陽電池材料技術、デバイス技術、プロセス技術
次世代太陽光発電システム技術・評価技術
太陽光発電システムに関する各国の政策等

 これらの研究活動等を通して、太陽光発電システムがわが国の次世代の巨大産業として大きく発展することが期待される。

第2期

設置継続の主旨

 太陽電池をエネルギー変換素子に用いた太陽光発電は、地球温暖化ガスを排出しないクリーンなエネルギーとして期待されております。平成16年度に第175委員会が設置されて以来、太陽光発電システムに関する研究開発、産業応用は大きく進展いたしました。この間、世界の太陽電池年間生産量は、約5倍に増加いたしました。また、本委員会メンバーを中心とした産学連携の研究成果などにより、5年前と比べての各種太陽電池変換効率が大幅に向上したほか、新型の薄膜太陽電池の生産が開始されるに至っております。2010年における世界の太陽電池の製造設備は、30GW に達する見通しとなっています。
 こうした背景のもと、平成20年6月、洞爺湖サミットに先立ち、わが国が今後、世界レベルでの環境問題に取り組むべき方向性を明示した福田ビジョンが世界に向けて発信されました。これに伴い、太陽光発電でこの目標を達成するためのロードマップが新たに議論され、2030年までの我が国における積算導入量目標は、2006年比40倍の50GWと定められました。また2050年までに、太陽電池のエネルギー変換効率を40%まで向上させ、発電コストを7円/kWh以下にまで下げることが決められました。
 太陽光発電に関する導入・開発目標を達成していくには、変換効率を大幅に向上させる基礎科学の探索が必要であります。また、製造面で眺めてみても、今後は、1GW~10GWの年間生産量に見合った製造プロセス開発も必要であります。わが国が将来ともに太陽光発電分野で優位性を保つには、継続的な革新技術開発が必要不可欠な状況となっております。  
 以上のように次世代太陽光発電システムを取り巻く環境は、大きく変化しており、わが国がこの分野で技術開発の優位性を保ちつつ、大規模な普及に大きく貢献していくには、新原理・新材料の探索から、デバイス物理、デバイス構成、セル・モジュール製造のための周辺技術、システム応用技術、エネルギーマネージメント技術等の開発を急がねばなりません。また、今後の研究開発には、極めて挑戦的な課題が多く、これには、物理学、無機・有機材料工学、化学工学、機械工学、電気・電子工学、エネルギー科学、生命科学等の学際的でかつ広範囲の学術研究が必要であります。さらに、産学間の連携研究、国際化に対応した迅速な調査研究と情報交換、国際的に著名な研究者や国の施策作成に関わる者等を加えての国際的討論会などによる情報の共有化が必要であります。このような観点から、本委員会をさらに継続することが不可欠であるとの結論に達し、本委員会の継続を申請しました。

今後の活動方針及び期待される成果

 第2期では、産業界の新しいニーズに応えるべく若手を中心に新原理、新材料、システム応用に関する委員を加えて研究委員会活動のいっそうの活性化を図るとともに、2010年以降の実用化を目指した次世代の太陽光発電システム研究に関する下記の課題と取り組む。①次世代の太陽電池材料技術、②次世代の太陽電池デバイス技術・プロセス技術、③次世代の太陽電池を用いたシステム技術・評価技術、④次世代の太陽光発電システムに関する各国の政策等。
 具体的には、以下の活動を行う。

定例研究会:年約2回程度
大学のシーズの提供、太陽光発電産業界からのニーズの提供の場とする。
国際ワークショップの開催(非公開)
”Workshop on the Future Direction of Photovoltaics”を継続する。
次世代の太陽光発電システムシンポジウムの開催(公開)
年1回開催する。参加者200名規模。
アジア諸国との連係
中国、韓国、台湾、タイ国、マレーシア、インドネシア等のアジア諸国とJoint Workshopを開催する。
産学連携体制の強化

 これらの研究活動等を通して、太陽光発電システムがわが国の次世代の巨大産業として大きく発展することが期待される。

第1期

設置の主旨

 太陽光発電は、地球温暖化ガスを排出しないクリーンなエネルギーとして期待されている。1974年の第1次石油危機以来、30年に亘り進められてきた太陽光発電システム技術開発が実を結びつつあり、この数年で急速に太陽光発電システムの導入量が増加した。2002年における国内の太陽電池生産量は255MWに達し、住宅用太陽電池設置件数は、年間4万件のレベルとなった。
 現在、太陽光発電システム技術開発に関係している学界、産業界の研究者は、2010年の太陽電池導入量目標482万kWに向けて鋭意努力しているところである。この導入量を達成するためには、2010年までに発電コストを23円/kWhまで下げる必要がある。
 一方、太陽光発電がわが国の代替エネルギー源として真に寄与していくためには、太陽光発電による発電コストを2020年までに10円~15円/kWh、さらに2030年には現在の火力発電、原子力発電並の5~10円/kWhまで下げていく必要がある。太陽電池年間生産量が250MWを超えた現在、産業界では、生産力向上に注力しているところであり、2010年以降の実用化を目指した次世代太陽光発電システム技術開発については、企業単独での開発が非常に難しくなってきている。このままでは、半導体LSIと同様に、いずれ韓国、台湾、さらには中国の追い上げを許し、後塵を拝する危惧がある。
 こうした状況のもとで、学界、産業界の研究者間で次世代の太陽光発電システム技術に関する情報交換を行い、さらには大学のシーズと産業界のニーズを産学連携という目に見える形で実現すべく、「次世代の太陽光発電システム研究委員会」を設置した。

取り組む課題

革新的次世代太陽電池材料技術
従来のシリコン太陽電池とは異なる新材料、新原理の探索
革新的太陽電池デバイス技術・プロセス技術
10円/kWh以下の発電コストを実現するため、変換効率を大幅に向上させるための太陽電池デバイス技術・プロセス技術に関する研究
次世代太陽電池を用いたシステム技術・評価技術
次世代太陽電池を用いたシステム関連の技術